持続可能な開発目標(SDGs)の期限2030年まで10年を切り、国や企業が率先してSDGsの推進を加速しています。
株式会社ODD FUTUREは食の持つ可能性を広げ、「サステナブルな世界の実現」を目指す先駆け的なフードテックスタートアップです。
今後ますます我々の身近な存在になってくる”サステナブル”な食を今後どう提供していくのか、代表の長田竜介氏に伺いました。
【株式会社ODD FUTURE】
2020年創業のフードテックスタートアップ。メイン事業として、コオロギパウダーを用いた代替タンパク食品ブランド「INNOCECT」食品OEM事業を運営し、サステナブルな食の選択肢を創ることを掲げる。
世界が注目する「昆虫食」を日本へ
–御社が開発された「CRIKET PROTEIN」はコオロギの粉末を使ったプロテイン補給食品ですが、コオロギプロテインに注目されたきっかけを教えてください。
欧米ではコオロギプロテインのマーケットが広がっていますが、日本ではまだまだ知られておらず、そこにビジネスチャンスを見出しました。また予てよりサステナビリティなプロダクトの開発に興味があったのも大きな動機となりました。
コオロギは100gあたりの含有タンパク量が牛の約3倍、また、生育が早いので牛よりも飼育コストを抑えられるなど、地球に優しいサステナブルなタンパク源なのです。
ただ、普段食べ慣れていない昆虫に対して消費者が抵抗感を抱くのは当然。そこを味やパッケージでどう克服していくかを考えてブランディングをしています。
―創業は2020年6月、商品発売が2020年11月と短いスパンですが、製品化に関して苦労はありましたか。
スピーディーに開発したと思われがちですが、前職(商社)在職時からコオロギパウダーを使って試作を繰り返していたので、その期間を含めると1年以上かかりました。
また、元々は自社で商品化するというより、海外から輸入しようと思っていました。
欧米では昆虫食のスタートアップがたくさんありマーケットがかなり大きくなっています。そこで売れているものを代理店として仕入れ、ECサイトで販売しようと思っていたんです。
ただ、創業した2020年当時、日本では昆虫食に対する認知度がほとんどなく、輸入時の食品検査を通すのが難しく、検査のコストもかなりかかることがわかったので、原料だけ海外から輸入して、メイドインジャパンの商品として展開する方向に事業をピボットし、現在に至っています。
―昆虫食の輸入代理店からD2Cへと変換したわけですね。
その時ちょうどD2Cも盛り上がってきていたのでうまく時流にのって、商品化→販売をし、御社からご出資いただいたという流れです。スピード感は確かにあるかもしれませんね。
―資金繰り面での苦労などあればお聞かせください。
創業当時は自己資金で回していました。
原料の仕入れなど、先出しで出費が発生するので大変でしたね。
また、コオロギを原料とした食品の製造を受け入れてくれる工場を見つけるのも容易ではありませんでした。
1日100件ほど電話し、工場を探しました。昆虫という特殊な食材なので当初は先方の言い値でお願いせざるを得ず、資金繰りには苦労しましたね。
「コオロギのその先」へ。サステナブルな暮らしを浸透させたい
―企業理念として「サステナブルな食の選択肢を創る」とありますが、昆虫食以外にも考えられているのでしょうか。
「サステナブルな世の中」を目指し、それを当たり前にしていくのが当社のミッションです。昆虫好きが高じて昆虫食ビジネスをするのではなく、サステナブル事業の第一歩として昆虫食から始め、昨年DGベンチャーズ(以下、DGV)からの出資をいただいて事業を拡大しているところです。
―出資を受けて変わったこと、また将来の展望もお聞かせください。
出資を受けて変わったことは3つあります。
まず、資金が潤沢になったことで、事業の進捗がより加速しました。
次に、経営にあたっての知見が増えたということです。創業当時は20代前半で、経営ノウハウや事業の推進方法に関して知見がなかったので、その部分をDGグループからたくさん学ばせていただきました。
また、御社を通してスタートアップのコミュニティにエントリーできたのも大きかったですね。他企業を紹介していただき、ビジネスにつながったこともありました。
さらに、BSテレ東「世界を変える起業家たち【Earthshot TV】」で取り上げてもらったことで、知名度が向上し、受注にも結びつきました。
資金以外でも様々な支援を受けることで、結果的にいいペースで成長できています。
今後は、自社で原料を作るべくコオロギの養殖事業に取り組む予定です。
また「コオロギのその先」と弊社では呼んでいますが、コオロギプロテインだけでなく、もっと世の中がサステナブルになるような新たな事業を展開していきたいと思っています。
―具体的にどのような「コオロギのその先」事業をお考えですか。
現在、国も企業も、世の中がサステナブルやエコの流れになっていますが、一般的な消費活動に視点を落とすと、エコなものを日々購入している人は本当に少ないといえます。
その理由は2つあると考えています。
まず、エコな商品は割高になりがちで、金銭的インセンティブがないということ。
エコな消費をしたところで、「自分はどれほどエコなことをしているか」という周りに対しての承認欲求に対するインセンティブも満たされないというのもあり、それらを解決するサービスを考えています。
CO2排出量を可視化する「カーボンフットプリント事業」は、国や大企業に対して仕組みはありますが、個人向けにはまだありません。
我々は、それを2C向けのカジュアルなアプリに落とし込もうと思っています。
例えば、エコな消費をするごとにポイントが付与されたり、トークンとして貯まり、次にエコな消費をするときに金銭的なインセンティブが発生したり、
その人の“エコな消費”の履歴から、その人がいつエコな消費を始めてどれくらいエコな消費をしているかを可視化させることで個人の信用スコアが上がり、金融で優遇されるなどのメリットが生まれるというサービスを考えています。
これらは日本のみならず世界で戦えるプロダクトになるのではないかと考えています。
―素晴らしいですね。最後に今後DGVに期待することがあれば教えてください。
最初にご出資いただいたのがDGVで、多くのビジネスチャンスも生まれ、大変ありがたく思っています。
他の事業者も次々と昆虫食分野に参入してきていますが、我々は何年も前からそこで試行錯誤してきました。
今後も、御社含め、ステークホルダーの方々と一丸となってトップを走りながら業界全体も広げていきたい、ファーストペンギンであり続けたいと思います。