コロナ禍に端を発したオンライン前提の業務環境も次第に定着してきましたね。

そういった体制移行に伴い、組織内でのコミュニケーションに危機感を抱いている方も多いのではないでしょうか。環境の整備を続ける中で、いまもなお試行錯誤し続けている企業も多いかと思います。

今回はその解決のヒントになるのではと、かねてより「組織エンゲージメント」に関するHRテック事業を展開する株式会社スタメンにオンラインにてお話しを伺いました。

(以下、質問者はDGベンチャーズメンバー、回答者は株式会社スタメン取締役コーポレート本部長大西 泰平氏)

 

 


[株式会社スタメン]

企業理念の「一人でも多くの人に、感動を届け、幸せを広める」を実現するために、2016年1月に創業。SaaS × HR Techサービスを展開するベンチャー企業として企業と従業員の間のエンゲージメント経営プラットフォーム「TUNAG」を開発・運営しています。2020年には、新たにオンラインファンサロン「FANTS」をリリースしました。


 

勝てる組織の大前提、企業における信頼関係のあり方

− HRテックを扱う企業って増えましたよね。よければ他社と差別化していくために、御社が意識していることを教えてください!

HRテック、増えてますよね。採用管理ツール、勤怠管理ツール等、様々なサービスや事業があると思います。簡単にいうと、その中で私たちは、組織のエンゲージメント向上を仕組みで実現することを目指した事業を展開しています。

スタメンでは「組織エンゲージメント」を会社と従業員の信頼関係×従業員同士の信頼関係だと定義しています。そういった関係を育んでいけるような社内制度を企画立案し、KPIを設定して水準高く実行出来るようサポートしているのです。その際、組織改善に向けた取り組みを一元管理し、データ駆動の改善を実現するプロダクトとして、自社開発している「TSUNAG」を提供しており、お客様が使いこなせるようになるまで伴走するコンサルティングも実施しています。

− 結果的にエンゲージメントに繋がるサービスは多いですが、エンゲージメントを高めることに主眼を置いたものは意外と少ないかもしれませんね。もう少し具体的に提供している内容をお聞きしてもよろしいですか?

私たちの定義する信頼関係を生むためには、いくつかステップをクリアする必要があります。(以下の図を参照)

(参照:https://stmn.co.jp/content/news/7436)

当社はそのステップを実現するために、1on1などをしっかりとクライアント各社の現状・実情に即した形で細かく内容を設計して運用してします。(よければ上記参照のURLをご覧ください)

私たちは社内制度の運用において、すべての会社が同じような内容・形で運用すべきとは考えておりません。理想の組織のあり方は業種業態によって異なります。

人間個人ですらこれだけ複雑なので、その集合体である組織に対する最適解は、決して一律で決められるような単純なものにはならないですよね。

従って「TUNAG」をサービス提供するときも、その組織にとっての改善のキーポイントを見極めることが非常に重要だと考えています。もちろんある程度は要素を抽出したうえでの掛け合わせによって決まるので基本の型のカスタマイズで臨むことは可能です。とはいえ、やはりお客様の企業をまるごと理解しなければ難しいことなので、担当者のカバー範囲は大きいですね。

 

ノウハウに基づいた仕組み作りをもって、組織の停滞を回避する

− 組織づくりを牽引していると実感できる内容ですね。実際に現場ではどのように進めているのでしょうか。

具体的にいうとサービスのオンボーディングに1〜2ヶ月かけ、その後は月に一度の頻度で継続的なレポーティングを行います。クライアントの担当者と弊社のカスタマーサクセスのメンバーが改善の打ち手について、細かなコミュニケーションやタスク管理を行うことのできる自社開発の独自ツールのご提供したりなど十分なサポート体制を整えたうえで、なるべく早く自社内で制度運用を自走化いただけるよう尽力しています。組織のポジティブな変化を実感するには半年〜1年間は必要でしょうか。

 

− 社内制度の運用は各社が自主的に取り組んでいることも多いですよね。御社が解決している課題は主にどんなものになりますか?

人と組織に対する施策は、一般的に形骸化しやすく・飽きられやすいんです。最初は気合を入れて走らせてみたものの、担当者の根気だけでまわしていた結果、異動や体制変更、期の区切りなどをきっかけに自然消滅していくことはよくあると思います。

制度の形骸化に陥る事例は大抵パターン化されています。上述したもの以外にも、例えば業務の調整をつけられず対応する優先順位を下げ続けてしまうとか。

こういった取り組みは、運用することそのもの以外にも、現状の活用実態を把握するデータ収集だけでも人的コストが発生しがちです。大抵は担当者が別のミッションを追いながら片手間で対応していることが多く、優先順位を上げきれず次第に対応が漏れ始めることがよくあります。

そうなると体感的にも重要性が希薄化しますし、成果や進捗を印象で話し始めて、取り組みの意味や目的を見失っていくことにもつながるのです。事実に基づかない個々人の印象値のみで、制度や施策の成果や効果を断じてしまうこと自体そもそも黄色信号ですよね。

またそれ以外にも、組織規模、市場環境など前提となる状況は変化していくもので、以前は正解だった施策が次第にそうではなくなることは往々にして起こります。今回のコロナも良い例ですよね。そういった変化に対する打ち手を迅速に提示することも、形骸化させないためのポイントです。

これらのシーンを想定すると、正しいデータをコストをかけずにすぐに抽出できることはやはり私たちのプロダクトの強みだと感じます。

同様の事態を引き寄せないよう、プロダクトの利便性はもちろん、円滑な運用を目的とした体制構築をサポートし、制度運用において倦怠感を生まないようにあらゆる工夫やノウハウを提供し続けることが、私たちの提供している価値であると言えます。

非対面であっても帰属意識を保つコツ

− コロナの影響で現在特に注力して取り組んでいることはなんでしょうか。

やはりオンライン前提の組織コミュニケーションの活性化施策でしょうか。

冒頭でお伝えしたように、弊社で定義するエンゲージメントの要件には従業員同士の信頼関係も含まれます。それらは突発的なランチや通路ですれ違った時の軽い雑談など、リアルで対面しているからこそ担保されている部分も多いので、物理的な接点が減る環境での接点量コントロールは解決すべき課題と認識しています。

また偶発的な接点は、部署を横断したプロジェクトに関する会話の発生など業務面での影響もあります。メンバーが自然とお互いの状況を認識する情報が減ると、社内の情報にアクセスできる場をオンラインで設けても自分が関わっているプロジェクトにしか能動的に注視しなくなっていくのです。

顧客のみなさまを拝見していると、私たちの提言以外にも自社内で企画されたユニークな取り組みがあって面白いですよ。日報の運用がかなり工夫されていたり、おやつタイムなどを設定し意識的に普段の会話に近い状態を作ろうとしているクライアント先もありますね。そういった事例は社内・顧客先に関わらず積極的にシェアしています。

経験に関わらず成長するチャンスがある、そんな組織を目指して作られた会社です。

− コメントにあったように組織や経営における実践例を知っていることが非常に重要だと感じますが、それでも知見が不足していることが多い新卒メンバーの採用に力を入れている理由を教えてください。

実はスタメンはHRテックに着手することを前提に起業した会社ではないのです。社会に求められて、勝てる事業を作っていく構想や戦略を話していた中で出てきたアイデアの一つがTUNAGでした。

「社内で人を育て、社会にたくさんのスターを輩出できるような会社をつくりたい」というのがスタメン創業当初からの願いです。

代表の加藤とは私の新卒時代に取引先として知り合い、仕事で関わるようになって8年も経ってから、お互いのタイミングが合い、共同創業に至っています。2人ともそれまで自分が所属してきた会社にたくさんのチャンスを貰って成長してきたという実感があったので、自分たちがつくる会社でも、共に働くメンバーに対して、自分たちがもらってきたのと同じように、成長の機会を数多く提供したいという想いがありました。

だからこそ、新卒採用は自分たちにとって必要不可欠なこととして創業初年度から実施しています。

おっしゃるように、組織エンゲージメントの事業運営には幅広い知識や経験が必要ですし、営業であれば、全員がすぐに売れるようになるというのは正直に言うと難しいです。一方で、成果を出すには社会人歴が長ければよいという訳でもありません。入社2年目の若手メンバーが、自分より何年も長く社会人経験を積んでいる大手企業出身の中途入社社員より、何倍も大きな成果を上げていたりもするのです。

そういったことも踏まえ、メンバーを採用する時はお客様と向き合う姿勢と、成果をたぐり寄せるマインドを重要視しています。私たち経営陣はそんなメンバーがチャレンジできる、チャレンジしたくなる環境を創出すること、そのサポートをする仕組みを作ることを意識しています。

− 最後に今後会社として目指していることを教えてください。

個人の成長を促す仕組み化はある程度整ってきたものの、まだまだ必勝の勝ちパターン、勝利の方程式という物は作れていません。1つ1つの有益なビジネスプロセスを元にして、実績に到るまでのフローをブラッシュアップし、組織コンサルティングの説得力、運用実績や事例なども増やしていきたいです。

また、エンゲージメントを通して活性化させる対象の幅も広げていきたいです。例えば、今「FANTS」というオンラインファンサロンを手がける新事業でチャレンジしている、スポーツチームやアーティストのスタッフとファンの関係性を強化するファンコミュニティ向けの取り組みですね。

企業組織を対象にして培ってきたものを、それ以外の場やコミュニティで展開できればと思っています。それを実現することが当面の目標です。あらゆる組織やチームが活性化し高くパフォーマンスする世界を創ることを目指していきます。

 

− エンゲージメントという切り口でまだまだできることがありそうですね。コロナ禍における取り組みなど参考になることを伺えたと思います。お話いただきありがとうございました!