スタートアップがブリッツ・スケーリングするためには、市場選択が非常に重要な要素となります。

 

今回ご紹介するのは、Agetech領域で、現在個人の相続における課題解決に挑む株式会社AGE technologies。

Open Network Lab(以下、Onlab) 第18期 Demo Dayで最優秀賞「Best Team Award」とオーディエンス賞「Audience Award」をW受賞。今年6月にDGベンチャーズ、カカクコムからシリーズAの資金調達を行いました。

 

起業までの道のり、Onlabでの体験、今回の資金調達の背景について、Onlab採択時から支援をしてきた佐々木と、投資担当の前川を交えて話を伺いました。


[株式会社AGE technologies(旧社名:株式会社マーク・オン)]

相続に伴う自宅などの不動産の名義変更手続きサービス「そうぞくドットコム不動産」を提供。 相続に関する情報を集めた無料のポータルメディア「そうぞくドットコムマガジン」を展開。


(左から、DGベンチャーズ前川、AGE technologies社塩原氏、デジタルガレージ佐々木)

事業環境の追い風を受け、果たすべき未来の確信を得られた

相続領域に着目したきっかけを教えてください。

 

塩原氏:

前職での事業承継コンサルティングの経験がきっかけです。

当時、北関東にある製造業や運送業などの中小企業を担当していましたが、相対する経営者は比較的ご高齢の方が多く、事業を家族に引き継ぐのか、外部(第三者)を招聘するのか、または会社を売却するのかといった「事業承継や相続」に関係する課題が根深いことを知りました。

それは、担当していた一部の地域だけではなく日本全体の大きな課題だと知り、起業のテーマにしようと考えました。

後継者がおらず、廃業を迫られている企業が増えており、高齢化社会と言われて久しいですが、人口減少下でも、年間にお亡くなりになる方の数は当面減りません。その中で、個人の相続でも何か課題があるのではないか?と考えました。元々、非IT領域でのテクノロジーを用いた事業が良いと考えており、その条件と当てはまったことで、起業を決意しました。

 

個人向けのサービスを対象にしたのはなぜでしょうか。

 

塩原氏:

起業に向けた調査を進める中で、相続に関する課題が根深いことに確信を持てた一方、事業承継や富裕層の相続問題については、コンサルティングという解決策が相性の良い領域だとわかりました。

次に、一般の方の相続手続きについて、実際にどんな手続きがあるのか詳しく調べた結果、非常に煩雑でわかりにくく、多くの人が苦労していることがわかりました。しかしそれは、テクノロジーによって定型化が可能な内容であると考え、ネットとの相性が良いと判断しました。

私たちは、社会課題をテクノロジーで解決していく道を探していたので、一般の方向けの相続手続きサービスでOnlabにエントリーすることにしました。

 

Onlabで初めて知り合った時はどんな印象でしたか?

 

デジタルガレージ佐々木:

対象としているマーケットの大きさと創業メンバーのバックグラウンドから、事業拡大の大きな可能性を感じました。

課題の根深さ、対象としているマーケットの大きさ、提供するソリューションが的確だったことがOnlabで最優秀賞を獲得したポイントだったと思います。

その後2年ほど経ちましたが、既存サービスをどう成長させるのか、さらなる成長のためにどういったビジョンを描くか、といった議論の中で、チームや経営者としての成長も実感しています。

世代を跨いだ課題、広がり続ける市場の可能性

将来的に狙っているマーケットに関して教えてください。

 

塩原氏:

私たちが取り組んでいるのは、高齢社会の課題をテクノロジーによって解決していくAgetechと呼ばれる領域です。相続に伴う不動産の名義変更手続きだけでなく、将来的にはAgetech領域のあらゆる課題をカバーする存在に成長していきたいと考えています。

私たちのメインユーザーは一部の富裕層ではなく、相続税の支払いが発生しないようなマーケットとしても大きい一般層です。相続手続きを行う個人サイドにペインポイントがあるということは、それに対応する金融機関や役所などにも同じ課題感があります。事業を進めていくことで、結果的に周辺領域のDX推進も目指していきます。

一方で、これらに向けては課題も少なくありません。Agetech領域におけるサービスは、お亡くなりになる方のご子息・お孫さん世代も跨いだ層へのソリューション提供となるため、ITリテラシーもニーズもまったく異なるユーザーへの理解が必要になるんです。そこに難しさを感じていますが、だからこそやりがいもあると考えています。

 

出資に至った決め手は。

 

DGベンチャーズ前川:

やはり対象とする市場の大きさですね。少子高齢化の日本で数少ないシュリンクしない領域と考えています。私自身も相続に苦労したことがあるため、その苦労を解決するプロダクトと今後の領域拡大に期待しています。

デジタルガレージグループとして、日本をアップデートする事業をカバーしていく中で社会的意義の強い事業として支援していきたいです。私たちにとっての第2のカカクコムにもなりうると期待しています。「AGE technologiesがエイジテック領域全体をリードする」世界を一緒に作れれば、と考えています。

その繋がりを築いてきてくれたOnlabに改めて感謝しています。今回を契機にOnlabとDGベンチャーズとの連携による必勝パターンをつくっていきたいです。

官民一体となった社会課題の推進を

最後に、会社が目指していることを教えてください。

 

塩原氏:

相続など、人生で経験する回数が少ないライフイベントは、情報の非対称性もあって、利用者側の負担コストが大きくなりがちです。そういった情報の非対称性を利用した商売・サービスではなく、正しい選択肢をユーザーに届ける世界を実現していきたいと思っています。

また、一般層のユーザーだけでなく、専門家や行政の方にも使ってもらえるサービスも検討しています。労働力人口が減少していく中で、これまでのやり方だけでは対応できず、今後このAgetech領域もDX推進が重要になってくると考えているためです。テクノロジーを使って、個人だけでなく、法人、行政などと連携し、業界全体での社会課題の解決を推進していきたいです。

お話いただきありがとうございました!