2019.04.12

アメリカ人創業者として、日本のアクセラレータで成功するには

デジタルガレージが運営するOpen Network Lab(Onlab)は、2010年に開始された、東京を拠点とするシードアクセラレータです。

Digital Garage / Open Network Lab(以下:Onlab)の海外プロジェクトリーダー兼プログラムメンターであるKen Coveyが、Tupac.bioの共同設立者であり、Onlabの第12期(2016年)卒業生であるEli Lyonsに、彼の会社について、Onlabについて、および将来の計画についてインタビューしました。

Eli Lyons — Co-founder of Tupac.bio and graduate of Onlab’s 12th batch

-Tupac.bioはどういった会社ですか?どのような問題を解決するのでしょうか?

合成バイオ企業にソフトウェアとサービスを提供して、研究開発プロセスの有効性を高め、より早く市場に参入できるようにします。私たちが協力している企業の例としては、SpiberやFinless Foodsで、それぞれクモの糸と細胞ベースの魚肉を生産しています。

-なぜ日本のアクセラレータプログラムであるOnlabに応募したのですか?応募する決め手は何でしたか?

私は、東京大学で博士課程の学生として数年間日本に滞在し、スタートアップでも働いていたのですが、その関係で私のネットワーク全体の拠点が、東京になりました。私の共同創立者を含め、当時私が知っていたすべての人がです。

当時、アクセラレータへの申し込みは、全く視野にありませんでした。このタイプの製品を市場に投入するのはまだ早いと思っていたので、私は当時持っていたアイデアを、本業の傍、パートタイムで作業するつもりでいました。その後、偶然、友人にDigital Garage / DGVのキャピタリストを紹介してもらいました。

そのキャピタリストは学生生活を海外で過ごし、英語ネイティブであったため、私はとても安心してコミュニケーションできました。さらに、このプログラムは英語でサポートがあり、今まで私が日本で話した多くのアクセラレータや投資家よりも、「オープンマインド」でした。さらに、デジタルガレージはグローバルに投資した実績もあり、実際にサンフランシスコなどの場所にもオフィスがあります。そうした理由から、私はプログラムに興味を持ちました。

-応募時、ビジネスはどういったステージでしたか?

応募時に、デザイン特許を出願したばかりです。まだ非常に早い時期でした。

-プログラム中にピボットをしましたか?

私たちが当初立てた仮説は、プログラム全体を通して変わりませんでした。合成DNA /遺伝子配列決定は、将来的には、はるかに安価になり、開発中のソフトウェアツールに対する需要が高まります。

このプログラムを通じ、非常に大まかなデモを作成し、潜在的な顧客とのミーティングをし、顧客インタビューをしました。これらを通じ、製品の開発ロードマップを大幅に変更することができました。

-Onlabは日本で最も「グローバルな」アクセラレータの1つとして知られていますが、主に日本語のプログラムのため、多くの困難があったかと思います。振り返って、プログラムはいかがでしたか?

Onlabプログラムは柔軟で、多くの参加者とメンターがバイリンガルだったため、あまり心配はありませんでした。

ただ、私が唯一心配になったのは、デモデーで、英語でピッチをした時です。特に他のすべての会社が日本語でピッチングしていたので。上手く伝わらないのではないかと心配していました。でも、結果的に大丈夫で、問題はありませんでした。

さらに、私たちのメンターは、非常に忍耐強く、付き合ってくれました。私たちが望んでいないことを強いるようなことは、一回もありませんでした。

プログラム当初、私たちは、5分間のピッチは非常に短く、「ばかげて」いて意味がない、と思っていました。なぜなら、科学系の発表10分間くらいかかるのが通常で、専門性が高い分野のため到底伝わり切りません。

しかし、私たちのメンターは、なぜ5分間のピッチを行うのが理にかなっているのか、投資家は何を期待しているのか、投資家の観点を教えてくれました。彼の忍耐力と直接的なフィードバックによって、技術的な詳細ではなく全体的な利益に集中することが最善であるのだと理解できるようになりました。

-Onlabで得られた、最大の学びは何でしたか?

全体を通し、Onlabでは非常に良い経験ができました。その中でも最も良かったのは、聞きたい時にすぐに聞けるメンターがいて、それをわかりやすく教えてくれたことです。たとえば、物事がどのように機能するか、投資家がどのように考えるかになどです。

当初資金調達をしていた時、私は非常に受動的だったと思います。当時は「私がやっていることを投資家に教え、彼らが私のアイデアに興味を持ってもらい、彼らが投資できるようにしよう」ということばかり考えていました。しかし、Onlabを通じて、フィードバックセッション中に積極的に取り組むことの重要性を学びました。

-アドバイスを貰う人をスクリーニングするプロセスは、アクセラレータプログラムのみならず、通常一般的にアドバイスを得る時にも当てはまりますか?

はい、これはアドバイスを受ける、全ての場合に当てはまります。特に投資家と話すとき、よく思うのですが、彼らは常に、非常に明確な方法論や意思決定プロセスを持っている訳ではないということです。ですから、意思決定者とは何か、彼らの決定にどのような思考プロセスが含まれるかを把握する質問が重要だと思います。

それから、結局のところ、どんなアドバイスを受けようとも、投資家が期待するものではなく、構築したい会社の姿に集中することが重要とも思います。私の経験では、他人が、あなたをどんなボックスに入れようとするか(どんな姿になることを求めるか)ではなく、「自分たちにとって最適なもの」に焦点を合わせたほうが良いです。

Digital Garageのエンジニアと投資家の方々が業界についてある程度の知識を持っていて、彼らが私たちの業界と会社についてもっと知りたいと思っていたのは幸いでした。それが、一緒に仕事をすることへの相互関心を生み出したものです。しかし、私の経験では、これは常にそうなる訳ではありません。

-日本人経営者以外のスタートアップのうち、どういう人たちに、Onlabに挑戦することをお勧めしますか?

国際的な企業に応募することをお勧めします。国際市場に参入したい場合、デジタルガレージは実際に米国にオフィスを構えており、取引を行い、米国の投資家を知っているため、Onlabはいい場所だと思います。

国際的企業のうち、どのような会社が特にOnlabに応募するべきかについていうと、日本にルーツやネットワークを持つか、日本特有の問題をターゲットにビジネスをする会社だと思います。また、技術的なスタートアップの場合、あなたの業界がDigital Garage / DG Labの重点分野ーAI、ブロックチェーン、バイオヘルス、AR / VR、セキュリティなどーの1つであるかどうか確認するべきと思います。

-Tupac.bioの今後数年間の計画を教えてください。

5月下旬に発表する、予定の非常にエキサイティングなパートナーシップがあります。このパートナーシップは、合成生物学業界に大きな影響を与える可能性があります。合成生物学は世界を食い尽くします—それは多くのことをより良く、変えるでしょう。

 


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