WHILL株式会社 CTO福岡 宗明氏のインタビュー後編をお送りします。

創業に繋がった車椅子ユーザーの一喝、立ちはだかる壁が高くとも手探りで進んできた日々についてお伝えした前回記事に続き、今回は同社のプロダクトへのこだわり、そして今後の事業の展望について触れていきます。

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[WHILL株式会社]

「すべての人の移動を楽しくスマートにする」をミッションとして、世界の歩道領域で新しい移動のスタイルを生み出しています。2012年5月に日本で創業し、2013年4月に米国、2018 年8月にオランダに拠点を設立し、パーソナルモビリティとMaaSの二つを事業の柱としています。


 

見た目も機能もカッコよく、イメージの変化を体現したプロダクトに

開発初期からデザイン性には特にこだわってらしたんですよね。

はい。私たちのプロダクトは車椅子を必要とするユーザーが「助けを必要とする人」として周囲から扱われ、自身でもそう認識してしまう状態を変えていきたいという想いで開発をはじめました。

CEOの杉江が元々カーデザイナーだったこともあり、かっこいい乗り物をつくるという点で妥協はなかったですね。

−例えばどんな所がポイントになりますか?

見た目でいうと、この斜めのラインはこだわりです。

角のない丸みを帯びたデザインで使いやすさ・親しみやすさを保ちつつ、シャープなラインを組みこむことで、洗練されたスタイリッシュな要素を取り入れています。これは初期モデルの時から設計思想にあるものです。

また、イメージを覆すようなかっこよさのためには、見た目だけでなくこれまでの車椅子と一線を画す機能が備わってこそと考えています。

したがって機能面ではタイヤの前輪にこのオムニホイールを採用し、降りたくなくなるような乗り心地の実現に励みました。

段差を乗り越えるために前輪を大きくしつつ、小回りが効く機動性を損なわない設計になっています。いくつかの車輪が組み合わさり、横方向に動くタイヤも同時に構成されているため細かい操作を可能にしているのです。この点は新しいモデルが出る毎に改良を重ね、使用しているユーザーによる直感的な操作がより精度高く動きに反映されるようになっています。自転するような動きも可能ですよ。

 

▼動画その❶

https://vimeo.com/user108775540/review/392382062/ea90f038e7

スムーズな乗り心地を実現しています。

▼動画その❷

https://vimeo.com/user108775540/review/392381275/dda61e8388

タイヤの動きをご覧ください。

 

「May I help you?」からの解放

− 強いこだわりが込められているんですね。ユーザーからはどんな反応がありましたか?

じつはアメリカの市場を広げるために、現地で実証実験を行なったことがあるんです。現地で車椅子ユーザーの方にお願いして、乗った感想をヒアリングしていました。

創業背景でお話していたような、車椅子活用によって自身の尊厳が損なわれてしまうような気持ちは、日本に限ったことではなくどの国でも起こりうることなんですね。実際に乗っていただく時にしぶい顔をされた事もあるんです。ただ、そのユーザーの方も我々のプロダクトに乗って街を周遊した結果、道ゆく人から何度も「Cool!」と声をかけられたらしいんですよ。

− それはとても嬉しい声ですね!

そうなんです。そういった声をかけられたことで、とても楽しそうに「このプロダクトには可能性を感じる」とおっしゃっていただけました。人からどんな対象として認知されるのか、単純にかっこいいと感じられるかは、プロダクトを利用するうえで本当に大切な要素だと痛感した瞬間でもあります。

その他にも、WHILLなら乗ってもいいという声や、20年振りに庭に出たという声もあります。涙を流して喜んでもらえることもあり、そんな商品を届けているというのは、私たちの誇りに繋がっています。

 

ハードウェア販売に留まらない、サービスとして新しい体験の創出を

− 今後はどういった展開を考えられていますか?

これまで私たちはメーカーとしてクラシックなビジネス展開をしていましたが、今後はサービス企業として新たなビジネスモデルに移行していきたいと思っています。具体的にはMaaSビジネスです。日本の電機メーカーが「モノからコトへ」という標語を掲げ、事業の在り方を変化させる流れがきていますが、まさに私たちもそれを目指し、そして今まさに超速で推進している状態です。

やり方としては様々な手段が考えられます。例えば現在施行されているプロジェクトでは、5箇所の国内外の空港と連携し自動運転を用いたテスト運用を行なっています。そこで空港内の移動の負荷軽減が立証され、顧客データが蓄積されたなら、街中での試運転へと展開していく予定です。

買い物をして荷物が重い時、歩き回って疲れた時に、アプリで簡単に呼び出したら自動運転でWHILLが迎えにきて自宅に帰る。そんな世界観も夢ではないと思っています。

 

「車椅子に乗っている人」の概念を変えていきたい

− 確かに従来の車椅子の使い方とは違いますね!

その通りです。車椅子のユーザーと言えば、現状は交通事故などで損傷を抱えた方、歳を重ねて筋力が低下した方などのイメージが強いかと思います。しかし本来であれば移動に課題を抱えている人の定義は、関節が痛むなどちょっとした不調を含めて多岐にわたっているはずです。

歩くことも出来るけれど正直億劫。出来れば家までの道を何かに乗ってリーズナブルに移動したい。今後はそういった方にも使っていただけるサービスにしていきたいと思っています。

これまではハードウェアを通してイメージの刷新を計っていましたが、今後はサービスのメッセージと融合して、私たちの願う世界観を広めていきたいですね。現在取り組んでいる空港での実証実験の先に、病院、ショッピングセンター、スマートシティとしての都市開発なども検討中です。

 

− 家の外での動きが変化しそうですね!最後に、私たちベンチャーキャピタルに期待いただけることがあれば教えてください。

実際立ち上げを経験して感じたのは、起業初期や中期はどれだけコアな部分に集中出来るかが大事だということです。なので勝手を承知でお伝えするなら、特にバックオフィスに関連する業務が全部手から離れたらとても有難いですね。そういった専門性やノウハウをお持ちであれば、そこを活かしたサポートを頂けると助かります。

そのほかコンタクトを取る難易度の高い方へのコネクションや、採用支援も嬉しいです。

ただ正直なところそういった手厚いサポート以上に、顕在化・潜在中に関わらず想定される課題が速やかに解消されるピンポイントなやりとりに頼もしさを感じたりもします。双方にとってヘルシーな状態を保ちつつ、課題解決が推進されているのが理想かもしれませんね。

− 起業家のみなさんの負担を増やさない配慮は大切ですよね。私たちも心がけたいと思います!